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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(れ)2020号 判決 1952年1月08日

本籍

仙台市新寺小路二四番地

住居

盛岡市中川原一三番地

仙台鉄道工業株式会社盛岡支店総務課長

柴崎幸太郎

明治二九年九月八日生

右の者に対する物価統制令違反被告事件について昭和二六年五月三一日仙台高等裁判所の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人の上告趣意は末尾添附別紙書面記載のとおりである。

論旨第一点に対する判断。

「裁判が迅速を欠き憲法第三七条第一項に違反したとしてもそれは判決に影響を及ぼさないことが明らかであるから、上告の理由とすることができないものと解すべきである」こと当裁判所大法廷の判例とする処である(昭和二三年(れ)第一〇七一号同年一二月二二日大法廷判決、集二巻一四号一八五三頁)。それ故論旨は理由がない。

同第二点に対する判断。

憲法第二五条第一項は、国家は国民一般に対して、概括的に、健康で文化的な最低限度の生活を営ましめる責務を負担し、これを国政上の任務とすべきであるとの趣旨であつて、この規定により、直接に、個々の国民は、国家に対して具体的、現実的にかかる権利を有するものでないことは当裁判所大法廷の判例とするところである(昭和二三年第二〇五号、同年九月二九日大法廷判決、集二巻一〇号一二三五頁)。従つて、論旨は採用することが出来ない。

同第三点に対する判断。

しかし、「憲法第一四条が法の下における国民平等の原則を宣明し、すべて国民が人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会関係上差別的取扱を受けない旨を規定したのは、人格の価値がすべての人間について平等であり、従つて人種、宗教、男女の性、職業、社会的身分等の差異にもとずいて、あるいは特権を有し、あるいは特別に不利益な待遇を与えられてはならぬという大原則を示したものに外ならない」(昭和二五年(あ)第二九二号、同年一〇月一一日大法廷判決、集四巻一〇号二〇三七頁)こと及び「事実審たる裁判所は、犯人の性格、年齢及び境遇並に犯罪の情状及び犯罪後の情況等を審査して、その犯人に適切妥当な刑罰を量定するのであるから、犯情の或る面において他の犯人に類似した犯人であつても、これより重く処罰せられることのあるのは理の当然であり、これを目して憲法第一四条の規定する法の平等の原則に違反するということはできない」(昭和二三年(れ)第四三五号、同年一〇月六日大法廷判決、集二巻一一号一二七五頁)ことは、いずれも当裁判所大法廷の判例するところである。従つて、論旨は理由がない。

よつて刑訴施行法三条の二刑訴法四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 小林俊三)

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